2025年5月24日(土)午後5時30分より武蔵野スイングホール11階レインボーサロンで開催されました。当日は、45名が参加して、総会、講演会に引き続き懇親会が行われ、午後8時30分に盛会裏に終了しました。
第1部 総会
◆中里史朗塾員センター課長、木川るり子城北三田会会長、塙耕平杉並三田会副代表世話人、小西哲夫調布三田会副会長、西脇正俊三鷹三田会幹事長、山中賢一武蔵野稲門会会長を来賓にお迎えして三澤正彦事務局長の司会で開始。塾歌斉唱、平尾和寿武蔵野三田会会長の挨拶に続き、ご来賓を代表して中里課長からご挨拶と塾の近況報告を頂きました。
◆平尾会長からは、昨今の物価上昇の影響を受け、従来の吉祥寺東急REIホテルから、レインボーサロンに会場を移しての開催となり、大幅な出席者の減少を心配しておりましたが、多くの会員、並びに来賓の皆様にご出席頂いたことへの謝意がありました。また、会員の高齢化もあり会員総数の減少を改善するため、2021年に続き今回は1985年から1990年卒の武蔵野市在住の塾員178名に「新入会員勧誘」案内状を4月に送付、57名から返信がありました。うち9名が「入会に興味あり」37名が「少し時間が経ってから検討したい」とのことで、この9名の方々の入会に向け活動して行くとの報告がありました。また、本年度は分科会の活動回数も大幅に増えているので、さらに多くの皆さんに積極的に分科会活動に参加して頂き交流の輪を広げたいとのことでした。
◆決議事項に関しては、平尾会長から2024年度の活動報告・決算報告及び2025年度の活動計画(案)と予算(案)、及び、幹事名簿を、事前にご承認頂いた旨の報告がありました。
◆最後に初参加の井上浩二会員(82商)から自己紹介がありました。
第2部 講演会
◆慶應義塾大学法学部錦田愛子教授より、「トランプ政権とパレスチナ・イスラエル」について講演して頂きました。講演の内容は以下の通りです。
◆最近のトランプ大統領の中東歴訪(アラブ首長国連邦・カタール・サウジアラビア)によりどのような効果がもたらされたのかを、大統領は「トランプ効果」というタイトルでホワイトハウスのウエブサイトで公開している。「トランプ効果」というサイトは、今回の政権交代により自分がいかに多大なる投資をアメリカに呼び込んでいるかをアピールするためのもので、今回の中東歴訪で合計3・2兆ドルの投資を呼び込んだこともここに記録されている。トランプにとって最重要課題は、低迷する米国企業の再生・経済発展・インフレ抑制である。
◆イスラエルは1948年の建国以来ずっと、ヨルダン・エジプトを除く他の周辺アラブ・イスラーム諸国と敵対してきた。第一期トランプ政権の末期、トランプが主導して、アラブ首長国連邦・バーレーン・スーダン・モロッコと「アブラハム合意」を結び、国交正常化を果たしたが、トランプ政権の終焉に伴いこの合意の拡大は頓挫していた。
◆今回の中東歴訪の目的の一つは、この「アブラハム合意」の再構築だと思われる。「アブラハム合意」は、ユダヤ人の国家であるイスラエルの国際的孤立の緩和を目指して、トランプの娘婿でユダヤ人のクシュナー元大統領上級顧問が考えた枠組みで、大統領選挙に勝利する為の重要な票田であるユダヤ人を念頭に生み出されたものである。
◆就任に合わせて停戦を実現させたかったトランプは、停戦をダメにしたイスラエルに腹を立て、今回の中東歴訪でイスラエルを訪問せずに、単独で様々な国と和平に向けた交渉を始めている。トランプ政権になってからアメリカは、イスラエルにとって大きな脅威であるイランとも直接対話を始めてしまった。また、この戦争が始まって以来攻撃用ドローンをイスラエルに飛ばしているイエメンのフーシ派とも、アメリカは単独で停戦合意を結ぶ動きを見せている。
◆更にイスラエルにとってショックなのは、アメリカはハマスとも直接交渉を始めてしまったことだ。今までアメリカはイスラエルとパレスチナの戦争にはあくまで仲介役としてかかわってきた。然し、アメリカは最後に一人生き残ったアメリカ国籍を持つ人質を早い段階で解放するためにハマスと直接交渉を始めた。このような動きからも、トランプはアメリカの国益と自分の大統領としての功績を重ねる為だけに、様々な政治的判断を下しているとしか思えない。
◆大統領就任直前にトランプがまとめた「トランプ停戦」では、三段階の停戦案が策定された。第一段階の「一部人質解放・パレスチナ政治囚の釈放・ガザの人口密集地からのイスラエル軍撤収」は無事に完遂することができた。
だが、第二段階の「イスラエル軍の完全撤退」は、絶対に受け入れられることはないだろう。なぜなら、イスラエルという国は世界中で迫害を受けて来たユダヤ人が、この地であれば平和に安心して暮らす事ができるという場所を確保するために作られた国で、安全保障を何よりも重要視する国だからである。◆このようにトランプ政権になって大きな動きがみられるようになったが、それはなぜなのか、少し政治的背景を見てみよう。トランプは歴代アメリカ大統領が出来なかったことを実現したという歴史的功績を求めている。イスラエルもパレスチナも、いくつもの宗教の大事な聖地と考えられているエルサレムを、自分たちの首都であると主張している。各国は暗黙の了解として大使館をエルサレムに置いてこなかった。トランプは第一期政権でエルサレムにアメリカ大使館を移転することによって、国際的タブーも簡単に破る事が出来る絶大な力を自分が持っていることを世界に見せつけたのだ。
◆では、トランプは中東に詳しい人物なのだろうか。ここでトランプが中東問題をどれぐらい知っているかを見てみよう。トランプはヨルダン国王に電話して、ガザのパレスチナ人を全部ヨルダンに引き受けてくれないか打診している。だが、ガザの人口は220万人で、それに匹敵するパレスチナ難民240万人が既にヨルダンには存在する。人口が1000万に満たない小国のヨルダンが到底引き受けられる数ではない。そんなこともトランプは知らなかったのだ。トランプはガザからパレスチナ人を追い出しそこにリゾートを作る「ガザのリビエラ化」で、大きな富を得ようとしている。当然、アラブ諸国はこれに反対している。このような強制移住は法的にも許されていない。
◆また、たとえ停戦に至ったところで、戦後復興は前途多難である。水・電機・道路・学校・病院などすべてのインフラが破壊され、復興に必要な資金は8兆6000億円に上る。たとえ順調に支援が入ったとしても、復興には今世紀末までかかる試算だ。イスラエル・アメリカには一銭も期待できない。唯一期待できるのが、莫大な石油収入を有する湾岸諸国である。現状では、人道支援物資の搬入が中断され、多くの人が飢餓の脅威にさらされている。最近、ようやく支援が再開されたが、その数は極わずかで全く足りていない。
◆イスラエルには敵視されているものの、国連パレスチナ難民救済事業機関UNRWAは、今まで何十年もパレスチナを支えて来た重要な組織である。パレスチナの人々に必要な支援が届くよう、是非寄付をお願いしたい。また、ガザだけでなくヨルダン川西岸でも入植者が村を襲撃して多くの人が重傷を負う悲惨な状況が続いている。アカデミー賞を受賞した映画「No other land」の舞台になったヨルダン川西岸の村を取材した経験を持つ元朝日新聞中東総局長をお招きして、6月15日に三田キャンパスにて講演を開催致しますので、是非会員の皆様にもご参加頂きたいとの事でした。以上が錦田愛子教授の講演内容です。
◆テーマが毎日テレビで耳にする「トランプ大統領とパレスチナ・イスラエル」というタイムリーな話題だったこともあり、参加の皆様は真剣な表情で熱心に教授のお話を拝聴されていました。
第3部 懇親会
◆懇親会は、下島泉副会長の音頭による乾杯で開始となりました。
◆食事は今回初めてのケータリング方式のブッフェではありましたが、各テーブルでは笑顔と会話が弾んでいました。